アキ~アキのカルテ4~
「他に聞きたいことはないのかしら?」震える手と、スープを眺めていた私に質問をぶつける。
「えっと…なんてお呼びしたらいいのでしょうか?」
女性は驚いたように目を丸くして、その後くすくすと笑いだした。
「こんな説明をした後に呼び方を聞かれるとは思わなかったは。
ほとんどの商品が泣き崩れるか、半狂乱のように暴れ出すか、もしくは抜け殻のようになるかだったから」
笑いを含むとこの女性の声は少し高くなった。
「私はリンドウ、ここではリンって呼ばれてるは、あなたは本当に面白い商品ね」
少し優しさを含んだような笑顔をむけた。
しかしその笑顔をすぐに消えた。
「さっさとそのスープ飲んじゃいなさい、あと5分で飲みなさい」
そう言うとリンはタイマーをセットした。
アキは急いでスープを口に運んだ。
もう冷えてしまったスープは少し塩味が強く、先ほどの優しい味ではなかった。
飲み干すと、30分間の食休憩が言い渡されベッドに横になった。
この後の不安が押し寄せてくるようだったが、アキにそれを抗う術はなかった。
ここでのアキの選択権は2つだけ、どんなに抗ってもその事実はかわらないように思えた。
category - 小説アキ
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