アキ~プロローグfin~
アキは宛がわれたベッドと机、椅子しかない白一色に部屋でただ一人震えていた。突きつけられた現実にただ打ちひしがれるしかなかった。
アキはその後多くの書類にサインをさせられた。
ほとんど内容は覚えていなかったが、1文だけがどうしても頭から離れなかった。
『乙は甲のどのような要望にも従い、それを必ず実行すること』
どのような要望でも従わないといけないのだ、一体どんなことをさせられるのだろうか?
ベッドに腰掛、体を抱え込み自分の震えをどうにかとめようとするが、今後のことを考えるとどうしても止まらない。
そして最後の女性の言葉だけがアキの希望になった。
「これであなたは我が社の商品よ、
安心して10年後には借金もない綺麗な体で外の世界に出してあげるは」
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アキ~プロローグ3~
なにを言っているんですか?それよりも彼は、彼はどこなんですか?」女性が何を言っているかわからないし、それよりも彼のことが心配でならない。
「彼は大丈夫よ、借金も全部あなた名義だし、外の世界で楽しく暮らしているんじゃないかしら?
それよりどっちにするの?10年?内臓?」
「どういうことですか?彼は…彼は…」
もう彼のことしか考えられなくなっていた。
「あなた騙されたのよ…あなた自分がいくらの借金あるか知ってる?もう返せないくらいよ」
その借金という言葉で我に返った。そうだ借金取りから逃げようとしていたのだ。
「えっと、えっと3000万なら必ずどれだけ時間かけてでも返しますから許し…」
「8000万よ!!何を馬鹿なこと言ってるの」
初めて声を荒げた女性に萎縮してしまった。
「そんなことありません、だって私は」
「自己破産してるはね、21歳で一回その前にした借金が3000万、そしてその後にした借金が3000万そしてその積もりに積もった利息で2000万ってとこかしら?
知ってる?自己破産ってした後に借金しちゃうと無効になってしまうのよ」
女性は矢継ぎ早に話している。
「8000万をどうやって返すの?年利10%としても800万よ、1年間にあなたが800万も稼げるとは思えないは」
そして彼女は最後の宣告を私に告げた。
「やくざにあなたの内臓全部売り飛ばされるか、私の元で10年間働くか、あなたに残された選択肢はそれしかないのよ」
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アキ~プロローグ2~
「そんなことどうでもよくなるは、なかなか綺麗な体をしているはね」私の質問は返ってこず、上から下まで見られる不躾な視線に居心地の悪さを感じた。
「いったいどういうことなんですか?私は待ち合わせしていたんです。帰してください!まだ待っているかもしれない。」
そうだ、まだ彼が待っているかもしれない。こんな寒い12月の夜に。
「ふふ、待ってなんかないはよあんなホスト」
「え?」
「あんなホスト信じて、健気ね、二人で夜逃げしようとしてたらしいはね?
12時にヤドリギの下で待ち合わせしてロマンチックね」
「なんで?なんで知ってるの?」
混乱が止まらない彼と私しか知らないはずなのに。この女性はすべてを知っている。
「聞いたのよあなたの彼にね、ろくでもない男にひっかかったものね」
「嘘よ、嘘!彼はどこ?あなたたちが彼になにかしたのね」
彼が危ないかもしれない。彼がこの人たちに捕まっているかも…
そう思うといてもたってもいられなかった。
私は唯一あるドアに走っていた。
扉を開くと私をさらった男たちがたっていた。
「あぁ…」
体を強張らせていると両腕をもたれまた部屋に引きずられるようにつれていかれた。
「落ち着きなさいよ、、三島アキさん」
男たちにしっかりと拘束されている私に女性は恐ろしいことを告げた。
「これから10年間ここで奉仕するのと、内臓抜かれるのとどっちがいいかしら?」
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アキ~プロローグ1~
私は逃げる途中だった。彼と一緒に二人で逃げる予定だったのに彼は来なかった。
変わりに黒尽くめの男たちがやって来て無理やり…
「商品に傷を付けられては困ります!!これでは1週間は客に出すのが遅れます!」
どこからか女性の怒鳴る声が聞こえる。
「…しか、……で。」
「もう結構です。貴方達も仕事でやったことでしたでしょうから、今後は気をつけてください。」
扉の向こうで誰かが怒られているようだ。
商品を傷付けた?何かの販売店かしら?
冷たいコンクリート張の床に毛布を敷かれ寝かされていた。
だんだん記憶が戻ってきた。あの後なんとか男から逃げようと暴れる私を、一人の大男が殴りつけたのだ。
腹部がヅキヅキするのはそのせいだろう。
扉が開くとパンツスーツ姿のスレンダーな女性が立っていた。
髪はきれいにアップ、整った顔立ち、切れ長な瞳。
女の私でもドキッとしてしまうほどの綺麗な女性でも雰囲気がすごく冷たい。
「目が覚めたのね、係りの者が乱暴してごめんなさいね」
謝ってはいるが、冷たい雰囲気はまったくかわりがない。
上体だけを起こして半分寝たままの私を女性は上からじろじろを見ていた。
「あの…ここは?」
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