アキ~アキのエステ6~
今やアキは腰あたりまで水に浸かってしまっている。腰からは冷たさがあがってくるようでアキを苦しめさせる。
しかしこのエステの辛いのはここからだった。
背中に水をかけるのと、足に水をかけるのとではまったく感じ方が違うように、下半身よりも上半身のほうが熱を感知しやすくなっている。
しかしアキは逃げる術などないのだ、少しずつ少しずつスロープを車椅子は下っていく。
「冷たいぃお願いとめて死んじゃうぃひやぁぁぁいいい」
アキは少しでも体を水面に出そうと背筋を伸ばしてみるがまったく効果などない。
じわじわと腰からおなかへと水面下にはいっていく。
やがて一番冷たさを強く感じる胸あたりにさしかかった。
「あぁぁぁひぃぃぃいやぁぁぁ」
アキの意味のない悲鳴が部屋中に響き渡った。
アキはひたすら冷たさに耐え、体がこの温度になれるのを待つしかなかった。
じょじょに体は沈み、首まですっかり浸かってしまった。
しかし車椅子は止まらない。アキは恐怖を感じていた。
このままでは頭まで水に浸かってしまう。
もしスズが引き上げてくれなければ溺死してしまうのだ。
「いやぁ止めて、お願いぃ息がいきがぁ」
何とかスズに車椅子を止めてもらおうとアキは訴えるが先ほどまでスズが立っていたところにスズの姿はなかった。
スズはいつの間にか退出していたのだ。
アキの背中に冷たいものが走った。
「あぁぁだめぇスズさん、あぁぁ」
何とか水面に顔を出そうと必死に上を見るが車椅子は止まらない。
必死に拘束された手足をばたつかせ、体を浮上しようとするがそんな微々たる動きではびくともしない。
そしてとうとうアキの頭はすっかり水に入ってしまった。
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