アキ~アキのエステ7~
アキはパニックになっていた。悲鳴をあげながら水の中に入ったため、口からも鼻からも水が入ってくる。
苦しく、死の恐怖が襲ってくる。手足をばたつかせようにも、まったく動くことができない。
嫌だ、死にたくない…死にたくない…
必死に息をしようとしても入ってくるのは水だけで、ただ聞こえない悲鳴をあげ続けていた。
だんだん気が遠くなってきて、一瞬あきらめかけたときに水面に顔がでた。
「ごほぉうがはぅぅ、がふぅ…」
盛大にむせながら口から鼻から回りも気にせず吐き出す。
「がふっつあぁぁぁ、ふうあぁぁぁぁ」
吐き出しながらアキは大声で泣き出していた。
ただただアキの泣き声は部屋に響き渡っていた。
アキが少し落ち着きを取り戻すともうすでに体は水面にでていた。
まだしゃくりあげ鼻水と涙で顔はくしゃくしゃだがその状況を認識することはできた。
気づくとスズがすぐ隣に立っていた。
体が知らずにカタカタと震えだしている。
それはスズへの恐怖からなのか、冷たい水に沈められたからくるものなのかわからなかった。
スズはパネルを操作するといまだ自動に動いている車椅子を手動に切り替えた。
アキはそこで車椅子が後進していたことに気づいた。
「便利でしょ?これ、前進も後進もパネルひとつなのよ」
スズは自分のおもちゃを自慢する子供のように楽しそうに話している。
何が楽しいのかくすくすっと笑いながら、車椅子を押し出した。
「さてと、お水もいっぱい飲めたでしょ?これで脱水症状の心配もないわね。
もう一度サウナルームへ行きましょうか」
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